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楽浪の国つ御神のうらさびて
荒れたる都見れば悲しも

歌の意味
楽浪の国を守る神の心がすさんで、荒れ果ててしまった都を見ると悲しいことだ。
鑑賞
巻第一 雑歌 33

詞書は前の歌に続き「高市古人の近江の旧き堵を感傷して作る歌(或る書に高市連黒人といふ)」
 都が荒れてしまったのは土地の神の心がすさんで衰えたためであると捉え、荒れた都を見る悲しみを詠んだ歌である。古代には、土地の繁栄はその地を治める国つ神の力によるものと考えられており、都の荒廃を神の衰えとして受けとめている点に、当時の信仰がよく表れている。前歌と一組となり、近江の旧都への哀惜を重ねている。
 作者の高市黒人は、持統天皇と文武天皇の時代の歌人で、官位や経歴は明らかでない。行幸に従った旅の歌が多く、旅の寂しさを静かに見つめる叙景歌にすぐれている。

 初句「楽浪の」は、前歌の三句と同じ地名で、近江の旧都の地を示している。
 二句「国つ御神の」は、その土地を治める神の意で、「国つ」の「つ」は「の」の意の古い助詞である。土地の神の存在を示している。
 三句「うらさびて」は、「うら」が心、「さぶ」が荒れすさむ、衰えるの意で、神の心がすさんでの意である。神の心の衰えが都の荒廃の原因とされている。
 四句「荒れたる都」は、「たる」が完了存続の助動詞「たり」の連体形で、荒れてしまった都の意である。
 結句「見れば悲しも」は、「も」が詠嘆の終助詞で、見ると悲しいことだの意である。前歌の結句「見れば悲しき」とほぼ同じ句で結び、二首の対応を明らかにしている。

くにつみかみ:その土地を治める神
うらさぶ:心が荒れすさむ、心が衰えてさびしくなる
作者
高市黒人
出典
万葉集
前の歌
古の人に我れあれや楽浪の 古き都を見れば悲しき
次の歌
白波の浜松が枝の手向け草 幾代までにか年の経ぬらむ