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嗚呼見の浦に舟乗りすらむをとめらが
玉裳の裾に潮満つらむか

歌の意味
嗚呼見の浦で舟遊びをしているであろう乙女たちの、美しい裳の裾に、今ごろ潮が満ちているだろうか。
鑑賞
巻第一 雑歌 40

詞書「伊勢国に幸す時に、京に留まれる柿本朝臣人麻呂の作る歌」
 持統天皇の伊勢行幸に従わず都に残った人麻呂が、行幸先の嗚呼見の浦で舟遊びをしているであろう宮廷の女性たちの華やかな姿を思いやる歌である。美しい裳の裾が潮に濡れるさまを想像し、目の前にない旅先の情景を色鮮やかに描き出している。左注は日本書紀を引き、朱鳥六年(692)三月、中納言の三輪高市麻呂が農事の妨げになるとして冠を脱いで行幸を諫めたが、天皇はそれに従わず伊勢に行幸したと記している。以下三首は、都に残った人麻呂が行幸の一行を思いやる連作である。
 作者の柿本人麻呂は、持統天皇と文武天皇の時代に活躍した宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人である。官位は低かったとみられるが、長歌を中心に雄大で格調高い歌を数多く残し、後世には「歌聖」とたたえられた。

 初句「嗚呼見の浦に」は、伊勢国の浦で、現在の三重県鳥羽市のあたりとされる。初句は字余りで、行幸先の地を示している。
 二句「舟乗りすらむ」は、「らむ」が現在推量の助動詞で、今ごろ舟に乗っているだろうの意である。都にいて遠くの光景を思いやる表現となっている。
 三句「をとめらが」は、行幸に従った宮廷の若い女性たちを指し、「ら」は複数を表す接尾語である。
 四句「玉裳の裾に」は、「玉」が美称で、美しい裳の裾にの意である。裳は女性が腰から下にまとう衣で、華やかな女官たちの装いを示している。
 結句「潮満つらむか」は、「らむ」が現在推量、「か」が疑問で、今ごろ潮が満ちているだろうかの意である。二句と結句に「らむ」を重ね、見えない情景への思いを強めている。

も:女性が腰から下にまとう衣
をとめ:若い女性
作者
柿本人麻呂
出典
万葉集
前の歌
山川も依りて仕ふる神ながら たぎつ河内に舟出せすかも
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釧着く答志の崎に今日もかも 大宮人の玉藻刈るらむ