安騎の野に宿る旅人うち靡き
寐も寝らめやもいにしへ思ふに
- 歌の意味
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安騎の野に宿る旅人たちは、くつろいで横になって眠ることなどできようか。昔のことを思うにつけて。
- 鑑賞
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巻第一 雑歌 46
詞書は前の歌に続き「軽皇子の安騎の野に宿りたまふ時に、柿本朝臣人麻呂の作る歌 短歌」
軽皇子に従って安騎野に宿った旅人たちが、昔のことを思うと、とてものんびりと横になって眠ることなどできないと詠む歌である。「いにしへ」とは、軽皇子の父で若くして亡くなった草壁皇子がかつてこの地で狩りをした日々を指し、亡き皇子への追慕の思いが一首を貫いている。軽皇子は後の文武天皇である。この歌から第四十九首までの四首は長歌に続く短歌の連作で、夜から明け方へと時を追って展開していく。
作者の柿本人麻呂は、持統天皇と文武天皇の時代に活躍した宮廷歌人で、万葉集を代表する歌人である。官位は低かったとみられるが、長歌を中心に雄大で格調高い歌を数多く残し、後世には「歌聖」とたたえられた。
初句「安騎の野に」は、大和国宇陀郡の野で、現在の奈良県宇陀市大宇陀のあたりにあたる。草壁皇子がかつて狩りをした地である。
二句「宿る旅人」は、安騎野に仮寝する軽皇子の一行を指している。
三句「うち靡き」は、「うち」が接頭語、「靡く」が横になるの意で、くつろいで体を横たえての意である。
四句「寐も寝らめやも」は、「寐」が眠り、「らめ」が現在推量の助動詞「らむ」の已然形、「やも」が反語で、眠ることなどできようか、いやできないの意である。ここで切れて、結句と倒置の関係になっている。
結句「いにしへ思ふに」は、昔のことを思うにつけての意で、倒置によって眠れない理由を最後に示している。長歌の結句「いにしへ思ひて」を受け、長歌と短歌を結びつけている。
い:眠り
なびく:横になる、身を横たえる
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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我妹子をいざ見の山を高みかも 大和の見えぬ国遠みかも
- 次の歌
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ま草刈る荒野にはあれど黄葉の 過ぎにし君が形見とぞ来し