あさもよし紀人羨しも真土山
行き来と見らむ紀人羨しも
- 歌の意味
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紀伊の人はうらやましいことだ。この真土山を行き来するたびに見ているのだろう。紀伊の人はうらやましいことだ。
- 鑑賞
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巻第一 雑歌 55
詞書は前の歌に続き「大宝元年辛丑の秋九月、太上天皇の紀伊国に幸す時の歌」
大和と紀伊の国境にある真土山の美しさをたたえ、行き来するたびにこの山を見ることのできる紀伊の人々がうらやましいと詠む歌である。二句と結句に同じ「紀人羨しも」を繰り返す歌謡的な構成で、土地をたたえる心を素朴で明るい調べに表している。左注は作者を調首淡海と記している。
作者の調淡海は、壬申の乱の際に大海人皇子に従った舎人の一人で、日本書紀にもその名が見える。のちに正五位上にまで昇った。
初句「あさもよし」は、麻の裳がよいの意で、麻の産地であった紀伊にかかる枕詞である。
二句「紀人羨しも」は、「羨し」がうらやましいの意、「も」が詠嘆の終助詞で、紀伊の人はうらやましいことだの意である。ここで切れる二句切れとなっている。
三句「真土山」は、大和と紀伊の国境にある山で、現在の奈良県五條市と和歌山県橋本市の境にあたる。旅人にとって国境を越える印象深い山であった。
四句「行き来と見らむ」は、「行き来と」が行き来するたびにの意、「らむ」が現在推量の助動詞の連体形で、行き来するたびに見ているのだろうの意である。
結句「紀人羨しも」は、二句と同じ句を繰り返して結んでいる。前歌が同じ音の反復で調べを整えたのに対し、この歌は句そのものを繰り返しており、並べられた二首がともに反復の技巧を生かしている。
あさも:麻で作った裳
きひと:紀伊国の人
まつちやま:大和と紀伊の国境にある山
- 作者
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調淡海
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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巨勢山のつらつら椿つらつらに 見つつ偲はな巨勢の春野を
- 次の歌
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川上のつらつら椿つらつらに 見れども飽かず巨勢の春野は