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引間野ににほふ榛原入り乱れ
衣にほはせ旅のしるしに

歌の意味
引間野に色美しく照り映える榛の原に、皆で入り乱れて分け入り、衣をその色に染めなさい、旅の記念に。
鑑賞
巻第一 雑歌 57

詞書「二年壬寅、太上天皇の参河国に幸す時の歌」
 三河国への行幸に従った折、引間野の榛の原に入り乱れて分け入り、その色で衣を染めて旅の記念にしようと呼びかける歌である。一行の人々が野に入り乱れるにぎやかな情景が目に浮かび、旅の楽しさと土地への賛美が明るく表されている。大宝二年(702)十月からの持統太上天皇の三河行幸の折の作で、持統太上天皇はこの年の十二月に崩御しており、最後の行幸となった。左注は作者を長忌寸奥麻呂と記している。
 作者の長意吉麻呂は、持統天皇と文武天皇の時代の宮廷歌人である。行幸に従った歌のほか、物の名を詠み込む機知に富んだ歌を得意とした。経歴は明らかでない。

 初句「引間野に」は、三河国の野とされ、現在の愛知県豊川市御津町のあたりとする説と、遠江国の浜松市のあたりとする説がある。
 二句「にほふ榛原」は、「にほふ」が色美しく照り映えるの意、「榛原」が榛の木の生える原の意である。榛は実や樹皮から染料をとる木で、その色づいたさまをいうとされる。
 三句「入り乱れ」は、人々が入り乱れての意で、一行が野に分け入るにぎやかなさまを表している。
 四句「衣にほはせ」は、「にほはす」が色を染めつけるの意で、命令形で呼びかけている。二句の「にほふ」と同じ語を重ね、野の色と衣の色とを響かせている。ここで切れる四句切れとなっている。
 結句「旅のしるしに」は、旅の記念にの意で、倒置によって目的を最後に示している。

はりはら:榛の木が生えている原
にほはす:色を染めつける、色づかせる
しるし:証拠となるもの、記念
作者
長意吉麻呂
出典
万葉集
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川上のつらつら椿つらつらに 見れども飽かず巨勢の春野は
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いづくにか船泊てすらむ安礼の崎 漕ぎ廻み行きし棚無し小舟