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宵に逢ひて朝面無み名張にか
日長く妹が廬りせりけむ

歌の意味
宵に逢って翌朝は顔を合わせるのが恥ずかしく隠れるという、その名張で、長い日々をあの娘は仮住まいしていたのだろうか。
鑑賞
巻第一 雑歌 60

詞書「長皇子の御歌」
 宵に逢った翌朝は恥ずかしくて顔を隠すという、その「隠る」と同じ音の名張の地で、恋しい人が長い日数を仮住まいして過ごしていたのだろうかと思いやる歌である。上の二句が名張を導く序詞となり、恥じらう女性の姿を印象的に描き出している。前後の配列から、持統太上天皇の三河行幸に従って名張を通った女性を思いやった歌とみられている。
 作者の長皇子は、天武天皇の皇子で、母は天智天皇の皇女の大江皇女である。同母弟に弓削皇子がいる。機知と風格を備えた歌を残している。

 初句「宵に逢ひて」は、宵に恋人と逢っての意で、恋人たちの逢瀬を示している。初句は字余りとなっている。
 二句「朝面無み」は、「面無し」が恥ずかしいの意で、「み」によって朝は恥ずかしいのでと理由を示している。初二句が、恥ずかしさに顔を隠す意から、隠れるの意の「なばる」と同音の「名張」を導く序詞となっている。
 三句「名張にか」は、伊賀国の名張の地で、「か」が疑問の係助詞である。結句の「けむ」と係り結びをなしている。本巻の第四十三首にも「名張の山」が詠まれ、旅の道筋として同じ地名を共有している。
 四句「日長く妹が」は、「日長く」が長い日数の意で、「け」は日を表す古い語である。旅にある恋人が長く名張にとどまっていたことを示している。
 結句「廬りせりけむ」は、「廬り」が仮の宿りをすること、「り」が存続、「けむ」が過去推量の助動詞の連体形で、仮住まいをしていたのだろうかの意である。三句の「か」を受けた係り結びで、遠い旅先の恋人を思いやって結んでいる。

なばる:隠れる
け:日、日数
いほり:仮に作った小屋に宿ること
作者
長皇子
出典
万葉集
前の歌
流らふる妻吹く風の寒き夜に 我が背の君はひとりか寝らむ
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大丈夫のさつ矢手挟み立ち向ひ 射る円方は見るにさやけし