み吉野の山のあらしの寒けくに
はたや今夜も我が独り寝む
- 歌の意味
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吉野の山から吹きおろす嵐が寒いのに、今夜もまた私はひとりで寝るのだろうか。
- 鑑賞
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巻第一 雑歌 74
詞書「大行天皇の吉野の宮に幸す時の歌」
吉野の山から吹きおろす嵐の寒い夜に、今夜もまたひとりで寝なければならないのかと、旅先の独り寝のさびしさを嘆く歌である。寒さと孤独とを重ね合わせ、都に残した人を恋しく思う心を表している。左注には「或いは天皇の御製歌といふ」とあり、文武天皇の作とする一説が伝えられている。
作者は題詞に記されておらず、左注に文武天皇の御製とする説が伝わるのみで、断定はできない。文武天皇は草壁皇子の子で、名を軽皇子といい、祖母の持統天皇から譲位を受けて十五歳で即位した。
初句「み吉野の」は、「み」が美称の接頭語で、吉野をたたえて言う。
二句「山のあらしの」は、山から吹きおろす激しい風の意で、原文では「山下風」と書かれている。
三句「寒けくに」は、「寒けく」が寒いことの意のク語法で、「に」によって、寒いのにの意となる。
四句「はたや今夜も」は、「はた」がやはり、また、「や」が疑問の係助詞で、今夜もまたの意である。結句の「む」と係り結びをなしている。
結句「我が独り寝む」は、「む」が推量の助動詞の連体形で、私はひとりで寝るのだろうかの意である。四句の「や」を受けた係り結びで、独り寝の寂しさを嘆いて結んでいる。本巻の第五十九首の「ひとりか寝らむ」が旅の夫の独り寝を思いやったのに対し、この歌は旅にある者自身の独り寝を詠んでおり、対をなす趣となっている。
あらし:山から吹きおろす激しい風
- 作者
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文武天皇(一説)
- 出典
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万葉集
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我妹子を早見浜風大和なる 我を松椿吹かざるなゆめ
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宇治間山朝風寒し旅にして 衣貸すべき妹もあらなくに