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ますらをの鞆の音すなり物部の
大臣盾立つらしも

歌の意味
勇ましい男たちの鞆の音が聞こえてくる。物部の大臣が儀式の盾を立てているらしい。
鑑賞
巻第一 雑歌 76

詞書「和銅元年戊申、天皇の御製」
 即位の年、勇ましい武人たちの鞆の音が聞こえてくるのを耳にして、物部の大臣が儀式のために盾を立てているらしいと詠む歌である。即位にかかわる儀式の準備が進むさまを音でとらえ、天皇としての重責を前にした緊張感がうかがえる。和銅元年(708)の大嘗祭の際の作とされる。次歌の第七十七首は、この歌に御名部皇女が和した歌である。
 作者の元明天皇は、天智天皇の皇女で、名を阿閇皇女という。草壁皇子の妃で文武天皇の母にあたり、文武天皇の没後に即位して、和銅三年(710)に平城京へ遷都した。

 初句「ますらをの」は、勇ましく立派な男子のの意で、儀式に仕える武人たちを指している。本巻の第六十一首の初句と同じ語である。
 二句「鞆の音すなり」は、「鞆」が弓を射るときに左手首に着ける革の防具で、弦が当たって音を立てる。「なり」は音によって推定する助動詞で、鞆の音が聞こえてくるの意である。ここで切れる二句切れとなっている。本巻の第三首の長歌の「中弭の音すなり」と同じく、弓の音によって見えない儀式や狩りを思う表現である。
 三句「物部の」は、「もののふ」が朝廷に仕える武人、また物部氏を指し、四句の「大臣」を修飾している。
 四句「大臣」は、「おほまへつきみ」と読み、ここでは物部氏の流れをくむ石上麻呂を指すとされる。
 結句「盾立つらしも」は、「盾立つ」が儀式のために盾を立て並べる意、「らし」が根拠のある推定、「も」が詠嘆で、盾を立てているらしいの意である。二句の音を根拠として、儀式の場を推し量っている。

とも:弓を射るとき左手首に着ける革の防具
もののふ:朝廷に仕える武人
おほまへつきみ:大臣
作者
元明天皇
出典
万葉集
前の歌
宇治間山朝風寒し旅にして 衣貸すべき妹もあらなくに
次の歌
吾が大君ものな思ほし皇神の 継ぎて賜へる我なけなくに