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秋の田の穂の上に霧らふ朝霞
いつへの方に我が恋やまむ

歌の意味
秋の田の稲穂の上に立ちこめる朝霞がいつ晴れるとも知れないように、私の恋はいつになったらやむのだろうか。
鑑賞
巻第二 相聞 88

詞書は前の歌に続き「磐姫皇后、天皇を思ひて作らす歌四首」
 秋の田の稲穂の上に立ちこめる朝霞に、晴れることのない恋の思いを重ねた一首である。上の句の景を序とし、下の句で心情を述べる構成をとる。
 磐姫皇后が仁徳天皇を思って作った四首の四首目で、作者は一連の詞書による。迎え、死、待つ決意と揺れた思いが、晴れない霞のような物思いに落ち着いて一連が結ばれる。
 作者の磐姫皇后は、葛城襲津彦の娘で、仁徳天皇の皇后である。古事記や日本書紀では嫉妬深い皇后として語られる。万葉集に載るこの一連は、後の時代の人が皇后に仮託して作ったものと考えられている。

 初句「秋の田の」は実りの季節の田を示す。本巻の第百十四首の但馬皇女の歌も同じ「秋の田の」で始まり、稲穂に恋の思いを託す点で対応している。
 二句「穂の上に霧らふ」の「霧らふ」は霧が一面に立ちこめ続ける意で、「ふ」は継続を表す。
 三句「朝霞」までが序詞で、いつまでも晴れない思いを導く。秋の景に「霞」を用いている点が注目される。
 四句「いつへの方に」は、いつごろ、どちらの方にの意で、時の見通しのなさを方角に置き換えて表している。
 結句「我が恋やまむ」の「む」は推量で、四句の「いつ」と呼応し、恋がやむのはいつのことかと嘆いて一連を閉じる。

きらふ:霧が一面に立ちこめ続ける
いつへ:いつごろ、いつの時分
作者
磐姫皇后
出典
万葉集
前の歌
ありつつも君をば待たむうち靡く 我が黒髪に霜の置くまでに
次の歌
居明かして君をば待たむぬばたまの 我が黒髪に霜は降るとも