居明かして君をば待たむぬばたまの
我が黒髪に霜は降るとも
- 歌の意味
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夜を明かしてあなたを待とう。私の黒髪に霜が降りかかろうとも。
- 鑑賞
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巻第二 相聞 89
詞書「或本の歌に曰く」
寝ずに夜を明かしてあなたを待とう、黒髪に霜が降ろうともと、一夜を待ち通す決意を詠んだ一首である。
詞書に「或本の歌に曰く」とあり、磐姫皇后の四首に添えて、別の本に伝わる形として載せられている。左注には「古歌集の中に出づ」とあり、第八十七首の異伝と見られる。作者は一連の配列によって磐姫皇后とされるが、古歌集の歌が伝承の中で皇后の歌と結びついたものと考えられる。
作者の磐姫皇后は、葛城襲津彦の娘で、仁徳天皇の皇后である。古事記や日本書紀では嫉妬深い皇后として語られる。万葉集に載るこの一連は、後の時代の人が皇后に仮託して作ったものと考えられている。
第八十七首では白髪になるまでの長い歳月を待つのに対し、本歌では一夜の霜として詠まれ、同じ主題を別の時間の尺度で扱う形になっている。
初句「居明かして」は、寝ずに起きたまま夜を明かしての意である。
二句「君をば待たむ」は本巻の第八十七首の二句と同じで、待つ決意を示す。二句切れである。
三句「ぬばたまの」は「黒」にかかる枕詞である。ぬばたまはヒオウギの黒い実とされる。
四句「我が黒髪に」は第八十七首と同じ句で、黒髪と白い霜の色の対比を導く。
結句「霜は降るとも」の「とも」は逆接の仮定で、夜の霜が髪に降りかかろうともの意である。二句に続く倒置の形で結ぶ。
ゐあかす:寝ないで起きたまま夜を明かす
ぬばたま:ヒオウギの実。黒く丸い
- 作者
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磐姫皇后
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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秋の田の穂の上に霧らふ朝霞 いつへの方に我が恋やまむ
- 次の歌
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君が行き日長くなりぬ山たづの 迎へを行かむ待つには待たじ