玉櫛笥覆ふを安み明けていなば
君が名はあれど吾が名し惜しも
- 歌の意味
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櫛箱の蓋をするようにたやすく隠せると思って、夜が明けてから帰って行かれたら、あなたの評判はともかく、私の名が立つのが惜しい。
- 鑑賞
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巻第二 相聞 93
詞書「内大臣藤原卿、鏡王女を娉ふ時に、鏡王女の内大臣に贈る歌一首」
夜が明けてから帰られては人に知られてしまう、あなたの名はともかく私の名が惜しいと、藤原鎌足を軽くたしなめた一首である。
詞書によれば、藤原鎌足が鏡王女に求婚したときに、鏡王女が鎌足に贈った歌である。櫛箱にまつわる語を重ねた機知に富む歌として知られる。
作者の鏡王女は、出自に諸説があり、額田王の姉とする説もある。のちに藤原鎌足の妻となったと伝えられる。
初句「玉櫛笥」は櫛などを入れる美しい箱で、蓋をする意から「覆ふ」を、蓋を開ける意から「明け」を導く。
二句「覆ふを安み」の「〜を〜み」は原因を表し、蓋をするのがたやすいのでの意である。二人の仲を隠すのはたやすいと思っての意を含む。
三句「明けていなば」は、蓋を「開け」る意と夜が「明け」る意を掛ける掛詞である。夜が明けてから帰って行ったならばの意。
四句「君が名はあれど」は、あなたの評判はかまわないけれどの意である。
結句「吾が名し惜しも」の「し」は強意、「も」は詠嘆で、自分の名が立つのが惜しいと結ぶ。
たまくしげ:櫛などを入れる美しい箱
あく:蓋を開ける意と、夜が明ける意を掛ける
いぬ:去る、帰って行く
- 作者
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鏡王女
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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秋山の木の下隠り行く水の 我れこそ益さめ御思ひよりは
- 次の歌
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玉櫛笥みむろの山のさな葛 さ寝ずはつひに有りかつましじ