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東人の荷前の箱の荷の緒にも
妹は心に乗りにけるかも

歌の意味
東国の人が献上する初物の箱の荷をしばる緒のように、あなたはしっかりと私の心に乗ってしまったことだ。
鑑賞
巻第二 相聞 100

詞書は前の歌に続き「久米禅師、石川郎女を娉ふ時の歌五首」
 東国から運ばれる貢ぎ物の箱をしばる緒にたとえ、あなたはしっかりと私の心に乗ってしまったと、恋心の深さを告げて一連を結ぶ一首である。
 詞書によれば、久米禅師が石川郎女に求婚したときの歌五首で、歌の末尾に付された「禅師」「郎女」の小注によって詠み手が示される。一連は弓にちなむ言葉で男女が問答を交わす形で、禅師の問い、郎女の二首の答え、禅師の二首の答えと続く。本歌はその五首目で、弓の言葉を離れて自分の思いを直接述べて締めくくる。末尾の「禅師」の小注は歌の本文から除いた。
 作者の久米禅師は、伝未詳の人物である。禅師は仏道の修行を積んだ僧を呼ぶ称である。

 初句「東人の」は東国の人の意で、六音の字余りである。
 二句「荷前の箱の」の「荷前」は、諸国から朝廷へ毎年納める初物の貢ぎ物をいう。
 三句「荷の緒にも」は荷をしばる緒のようにの意で、初句からここまでが序詞となり、荷が馬に乗る意から「心に乗る」を導く。
 四句「妹は心に」は、いとしいあなたは私の心にの意である。
 結句「乗りにけるかも」の「にけり」は完了と詠嘆、「かも」は詠嘆で、心にすっかり乗ってしまったと結ぶ。

あづまひと:東国の人
のさき:諸国から朝廷へ毎年献上する初物の貢ぎ物
を:ひも、綱
作者
久米禅師
出典
万葉集
前の歌
梓弓弦緒取りはけ引く人は 後の心を知る人ぞ引く
次の歌
玉葛実ならぬ木にはちはやぶる 神ぞつくといふならぬ木ごとに