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ふたり行けど行き過ぎかたき秋山を
いかにか君がひとり越ゆらむ

歌の意味
二人で行っても越えにくい秋の山を、どのようにしてあなたは今ひとりで越えているのだろうか。
鑑賞
巻第二 相聞 106

詞書は前の歌に続き「大津皇子、竊かに伊勢の神宮に下りて上り来る時に、大伯皇女の作らす歌二首」
 二人で行っても越えにくい寂しい秋の山を、弟は今ひとりでどう越えているのだろうかと、遠ざかる弟の身を案じた一首である。
 大伯皇女が伊勢から大和へ帰る大津皇子を送った二首の二首目で、作者は一連の詞書による。見送ったのちの思いへと時間が進み、一首目の見送りの場面を受けている。
 作者の大伯皇女は、天武天皇の皇女で、大津皇子の同母の姉である。伊勢神宮に仕える斎宮を務めた。

 初句「ふたり行けど」は、二人で行ってもの意で、結句の「ひとり」と対をなす。
 二句「行き過ぎかたき」は、通り過ぎにくいの意である。
 三句「秋山を」の秋山は、寂しく険しい山路を思わせる。本巻の第九十二首の鏡王女の歌にも秋山が詠まれている。
 四句「いかにか君が」の「か」は疑問の係助詞で、結句の「らむ」で結ぶ係り結びである。
 結句「ひとり越ゆらむ」の「らむ」は現在推量で、今ごろひとりで越えているだろうと遠くの弟を思いやる。初句の「ふたり」と「ひとり」の対比がきいている。

こゆ:山や峠を越える
作者
大伯皇女
出典
万葉集
前の歌
我が背子を大和へ遣るとさ夜更けて 暁露に我れ立ち濡れし
次の歌
あしひきの山のしづくに妹待つと 我れ立ち濡れぬ山のしづくに