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大名児を彼方野辺に刈る草の
束の間も我れ忘れめや

歌の意味
大名児よ、遠くの野辺で刈る萱をひと握りに束ねる、その束ほどの短い間でも、私があなたを忘れることがあろうか。
鑑賞
巻第二 相聞 110

詞書「日並皇子尊、石川女郎に贈り賜ふ御歌一首」
 遠くの野で刈る萱の束に寄せて、ほんの短い間もあなたを忘れることはないと、石川女郎への思いを伝えた一首である。
 詞書の注に、女郎の字を大名児というとある。大津皇子と同じ石川女郎に贈った歌とみられ、二人の皇子の恋のさや当てを思わせる配列になっている。
 作者の草壁皇子は、天武天皇と持統天皇の皇子で、皇太子となったが即位の前に亡くなった。日並皇子尊と称えられ、文武天皇の父である。

 初句「大名児を」は石川女郎の字で、呼びかけるように歌い出す。
 二句「彼方野辺に」は、遠くの野辺にの意である。
 三句「刈る草の」は、刈る萱のの意で、ここまでが序詞となり、刈った草を一握りずつ束ねることから「束」を導く。
 四句「束の間も」は、一握りの幅ほどの短い間もの意である。
 結句「我れ忘れめや」の「め」は推量の助動詞「む」の已然形、「や」は反語で、忘れることがあろうか、いや決して忘れないの意である。

をちかた:遠くの方、向こう
つか:ひと握りの幅。短い時間のたとえ
作者
草壁皇子
出典
万葉集
前の歌
大船の津守が占に告らむとは まさしに知りて我がふたり寝し
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いにしへに恋ふる鳥かも弓絃葉の 御井の上より鳴き渡り行く