いにしへに恋ふる鳥かも弓絃葉の
御井の上より鳴き渡り行く
- 歌の意味
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昔を恋い慕う鳥なのだろうか。ゆずりはの茂る御井の上を、鳴きながら渡って行く。
- 鑑賞
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巻第二 相聞 111
詞書「吉野の宮に幸す時に、弓削皇子の額田王に贈与る歌一首」
吉野の宮で、泉の上を鳴き渡る鳥に昔を恋う心を感じ取り、その思いを額田王に贈った一首である。
詞書によれば、持統天皇の吉野行幸の折に、弓削皇子が大和に残る額田王に贈った歌である。父の天武天皇ゆかりの吉野で、天武天皇の時代を知る額田王に昔をしのぶ思いを託している。
作者の弓削皇子は、天武天皇の皇子で、母は天智天皇の皇女の大江皇女である。長皇子の同母弟にあたる。
初句「いにしへに」は、昔にの意で、天武天皇の在世のころを思わせる。次歌の第百十二首も同じ初句で答えている。
二句「恋ふる鳥かも」の「かも」は疑問を含む詠嘆で、昔を恋う鳥なのだろうかの意。二句切れである。
三句「弓絃葉の」は、ゆずりはの木のの意で、次の御井を修飾する。
四句「御井の上より」の御井は吉野の宮の清らかな泉で、「より」は通り過ぎる場所を示す。
結句「鳴き渡り行く」は、鳴きながら空を渡って行く意で、動きのある情景で結ぶ。
ゆづるは:ユズリハ。新しい葉が出てから古い葉が落ちる常緑樹
みゐ:神聖な泉や井戸
- 作者
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弓削皇子
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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大名児を彼方野辺に刈る草の 束の間も我れ忘れめや
- 次の歌
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いにしへに恋ふらむ鳥は霍公鳥 けだしや鳴きし我が念へるごと