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いにしへに恋ふらむ鳥は霍公鳥
けだしや鳴きし我が念へるごと

歌の意味
昔を恋い慕っているというその鳥は、ほととぎすだろう。おそらく鳴いたのだろう、私が昔を思っているように。
鑑賞
巻第二 相聞 112

詞書「額田王、和へ奉る歌一首」
 弓削皇子の問いに答えて、昔を恋う鳥はほととぎすで、私が昔を思うように鳴いたのだろうと応じた一首である。
 詞書の注に「倭の京より進り入る」とあり、大和の都から吉野の皇子のもとへ届けた歌である。ほととぎすは昔をしのんで鳴く鳥とされ、天武天皇の時代を思う皇子の心に、老いた額田王が自らの思いを重ねている。
 作者の額田王は、鏡王の娘とされ、はじめ大海人皇子に愛されて十市皇女を生んだ。のちに天智天皇に仕えたとされ、万葉集の初期を代表する女性歌人である。

 初句「いにしへに」は前歌の初句をそのまま受けている。
 二句「恋ふらむ鳥は」の「らむ」は伝え聞いたことを推し量る意で、昔を恋うているというその鳥はの意。前歌の「恋ふる鳥かも」を受けて言い換えている。
 三句「霍公鳥」はほととぎすで、昔をしのんで鳴く鳥とされた。三句切れである。
 四句「けだしや鳴きし」の「けだし」はおそらくの意、「や」は疑問で、たぶん鳴いたのだろうかの意である。
 結句「我が念へるごと」は、私が昔を思っているようにの意で、倒置によって鳥と自分の思いを重ねて結ぶ。

ほととぎす:初夏に鳴く鳥。昔をしのんで鳴くとされた
作者
額田王
出典
万葉集
前の歌
いにしへに恋ふる鳥かも弓絃葉の 御井の上より鳴き渡り行く
次の歌
み吉野の玉松が枝ははしきかも 君が御言を持ちて通はく