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後れ居て恋ひつつあらずは追ひ及かむ
道の隈廻に標結へ我が背

歌の意味
あとに残って恋い慕い続けているくらいなら、追いかけて行こう。道の曲がり角ごとに目印を結んでおいてくれ、あなた。
鑑賞
巻第二 相聞 115

詞書「穂積皇子に勅して近江の志賀の山寺に遣はす時に、但馬皇女の作らす御歌一首」
 勅命で近江の志賀の山寺へ遣わされる穂積皇子に、あとに残って恋い続けるくらいなら追いかけて行くから、道の曲がり角に目印を結んでおいてほしいと願った一首である。
 詞書によれば、穂積皇子が勅命によって志賀の山寺に遣わされたときの歌である。二人の恋が知られたことによる処置とみる説もあり、別れを拒む皇女の激しさがうかがえる。
 作者の但馬皇女は、天武天皇の皇女で、母は藤原鎌足の娘の氷上娘である。異母兄の高市皇子の宮にいたが、同じく異母兄の穂積皇子と恋仲になった。

 初句「後れ居て」は、あとに残っていての意である。
 二句「恋ひつつあらずは」は、恋い続けているくらいならの意で、本巻の第八十六首の磐姫皇后の歌、第百二十首の弓削皇子の歌と同じ言い回しである。
 三句「追ひ及かむ」の「しく」は追いつく意、「む」は意志で、三句切れとなる。
 四句「道の隈廻に」の「隈廻」は道の曲がり角の意である。
 結句「標結へ我が背」の「標」は目印として結ぶ縄などで、命令形「結へ」で恋人に呼びかける。本巻の第百五十一首の額田王の歌の「標結はましを」とも響き合い、恋人を追う標と、亡き天皇を引き留める標という対をなしている。

しく:追いつく
くまみ:道の曲がり角
しめ:目印や占有のしるしに結ぶ縄など
作者
但馬皇女
出典
万葉集
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秋の田の穂向きの寄れる片寄りに 君に寄りなな言痛くありとも
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人言を繁み言痛みおのが世に いまだ渡らぬ朝川渡る