古典和歌stream

ますらをや片恋せむと嘆けども
醜のますらをなほ恋ひにけり

歌の意味
立派な男子たる者が片恋などするものかと嘆くけれども、この情けない男子は、それでもやはり恋してしまったことだ。
鑑賞
巻第二 相聞 117

詞書「舎人皇子の御歌一首」
 立派な男子が片恋などするものかと自分を叱りながらも、やはり恋してしまったと、情けない自分を「醜のますらを」と自嘲した一首である。
 次歌に舎人娘子の答えがあり、嘆きの言葉を受けて答える贈答の形になっている。
 作者の舎人皇子は、天武天皇の皇子で、日本書紀の編纂を主宰した。淳仁天皇の父である。

 初句「ますらをや」の「や」は反語で、立派な男子が片恋などしようかの意である。次歌の第百十八首も「ますらをのこ」の語で応じている。
 二句「片恋せむと」は、片思いなどするものかとの意である。
 三句「嘆けども」は逆接で、嘆くけれどもの意である。
 四句「醜のますらを」の「醜」は自分をののしる語で、情けない男の意。初句の「ますらを」を反転させている。
 結句「なほ恋ひにけり」の「にけり」は完了と詠嘆で、それでもやはり恋してしまったと結ぶ。

ますらを:立派な男子
しこ:醜いもの、情けないもの。ののしる意を込める
作者
舎人皇子
出典
万葉集
前の歌
人言を繁み言痛みおのが世に いまだ渡らぬ朝川渡る
次の歌
嘆きつつますらをのこの恋ふれこそ 我が髪結ひの漬ちてぬれけれ