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夕さらば潮満ち来なむ住吉の
浅香の浦に玉藻刈りてな

歌の意味
夕方になったら潮が満ちてくるだろう。今のうちに住吉の浅香の浦で玉藻を刈ってしまおう。
鑑賞
巻第二 相聞 121

詞書は前の歌に続き「弓削皇子、紀皇女を思ふ御歌四首」
 夕方に潮が満ちる前に浅香の浦で玉藻を刈ってしまおうと詠み、機を逃さずに恋を遂げたいという思いを託した一首である。玉藻は恋しい女性のたとえとされる。
 詞書によれば、弓削皇子が紀皇女を思って作った四首である。紀皇女は天武天皇の皇女で、皇子の異母姉妹にあたる。一連は、恋が滞りなく続いてほしいという願い、恋の苦しさに花のように散りたいという嘆き、機を逃さず恋を遂げたいという思い、恋やつれの嘆きと続く。本歌はその三首目で、作者は一連の詞書による。
 作者の弓削皇子は、天武天皇の皇子で、母は天智天皇の皇女の大江皇女である。長皇子の同母弟にあたる。

 初句「夕さらば」の「さる」は時がやってくる意で、夕方になったらの意である。
 二句「潮満ち来なむ」の「なむ」は強い推量で、きっと潮が満ちてくるだろうの意。二句切れである。
 三句「住吉の」は摂津国の地名で、「すみのえ」と読む。
 四句「浅香の浦に」は、住吉の浦の一部の地名である。
 結句「玉藻刈りてな」の「て」は完了の助動詞「つ」の未然形、「な」は意志を表し、刈ってしまおうと自らを促す。潮が満ちれば刈れなくなることに、障りが生じる前に恋を遂げたい思いが重なる。

さる:時がやってくる、移ってくる
たまも:美しい藻。「玉」は美称
作者
弓削皇子
出典
万葉集
前の歌
我妹子に恋ひつつあらずは秋萩の 咲きて散りぬる花にあらましを
次の歌
大船の泊つる泊りのたゆたひに 物思ひ痩せぬ人の子故に