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天の原振り放け見れば大君の
御寿は長く天足らしたり

歌の意味
大空をはるかに仰ぎ見ると、大君のお命は長く、天いっぱいに満ち足りている。
鑑賞
巻第二 挽歌 147

詞書「天皇の聖躬不予の時に、大后の奉る御歌一首」
 天智天皇が重い病にあったとき、大空を仰ぎ見て、大君の命は長く天に満ちていると言祝ぎ、回復を祈った一首である。言葉にしたことが実現するという言霊の信仰に支えられた祈りの歌である。
 本歌から天智天皇の病と崩御をめぐる近江朝の挽歌群が始まり、標目に「近江大津宮に天の下知らしめす天皇の代」とある。詞書によれば、天皇の病の時に大后が奉った歌である。
 作者の倭姫王は、天智天皇の皇后で、舒明天皇の皇子の古人大兄皇子の娘である。詞書では大后、倭大后と記される。

 初句「天の原」は、広々とした大空をいう。
 二句「振り放け見れば」は、はるかに仰ぎ見ると、の意で、「ば」は確定条件を表す。
 三句「大君の」は、天智天皇を指す。
 四句「御寿は長く」は、大君のお命は長くの意である。
 結句「天足らしたり」は、天いっぱいに満ち足りておられるの意で、尊敬の「す」と存続の「たり」を用いて言い切り、天皇の命の永さを言祝ぐ。

あまのはら:広々とした大空
ふりさく:はるかに仰ぎ見る
あまたらす:天いっぱいに満ち足りておられる
作者
倭姫王
出典
万葉集
前の歌
後見むと君が結べる磐代の 小松がうれをまたも見むかも
次の歌
青旗の木幡の上を通ふとは 目には見れども直に逢はぬかも