見まく欲り我がする君もあらなくに
何しか来けむ馬疲るるに
- 歌の意味
-
会いたいと思うあなたももういないのに、どうして来てしまったのだろう。馬が疲れるだけなのに。
- 鑑賞
-
巻第二 挽歌 164
詞書は前の歌に続き「大津皇子の薨ぜし後に、大来皇女、伊勢の斎宮より京に上る時に作らす御歌二首」
会いたいと願う弟はもういないのに、どうして来たのだろう、ただ馬が疲れるだけなのにと、都へ上った旅のむなしさを嘆いた一首である。
大来皇女が伊勢から都へ上るときの歌二首の二首目で、作者は一連の詞書による。前歌の四句をそのまま用いて、嘆きを重ねている。
作者の大伯皇女は、天武天皇の皇女で、大津皇子の同母の姉である。伊勢神宮に仕える斎宮を務めた。詞書では大来皇女と記される。
初句「見まく欲り」の「見まく」は「見む」のク語法で、会いたいと願っての意である。
二句「我がする君も」は、私が会いたいと思うあなたもの意である。
三句「あらなくに」は、もういないのにの意で、前歌の結句を受けている。
四句「何しか来けむ」は前歌の四句と同じで、どうして来たのだろうと嘆く。
結句「馬疲るるに」は、馬が疲れるだけなのにの意で、倒置によって旅の徒労感を最後に示す。
ほる:欲しがる、願う
- 作者
-
大伯皇女
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
神風の伊勢の国にもあらましを 何しか来けむ君もあらなくに
- 次の歌
-
うつそみの人にある我れや明日よりは 二上山を弟背と我が見む