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鳥座立て飼ひし雁の子巣立ちなば
真弓の岡に飛び帰り来ね

歌の意味
止まり木を立てて飼ってきた雁の雛よ、巣立ったならば、真弓の岡に飛び帰ってきておくれ。
鑑賞
巻第二 挽歌 182

詞書は前の歌に続き「皇子尊の宮の舎人ら、慟傷して作る歌二十三首」
 皇子が止まり木を立てて飼っていた雁の雛に、巣立ったならば皇子の眠る真弓の岡へ飛び帰ってきてほしいと呼びかけた一首である。
 詞書によれば、草壁皇子の宮に仕えた舎人たちが、皇子の死を嘆き悲しんで作った歌二十三首である。左注は日本書紀を引き、皇子が持統天皇三年(689)四月に亡くなったと記す。一連は、主を失った島の宮の庭や池、殯宮の置かれた真弓の岡や佐田の岡で宿直する舎人たちの嘆きを、さまざまな場面から詠み継いでいる。本歌は一連の十二首目である。
 作者は草壁皇子の宮に仕えた舎人たちで、一人一人の名は伝わらない。舎人は皇族や天皇の身近に仕えて警護や雑務にあたった役人である。柿本人麻呂が舎人の立場に立って作ったとする説もあるが、定まっていない。

 初句「鳥座立て」の「鳥座」は鳥のねぐらや止まり木のことで、それを立てての意である。
 二句「飼ひし雁の子」は、皇子が飼っていた雁の雛の意である。
 三句「巣立ちなば」の「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形、「ば」は仮定で、巣立ったならばの意である。
 四句「真弓の岡に」は、皇子の殯宮や墓のある真弓の岡にの意で、一連の四首目の第百七十四首にも詠まれている。
 結句「飛び帰り来ね」の「ね」は願望で、飛び帰ってきておくれと呼びかける。

とぐら:鳥のねぐら、止まり木
すだつ:ひなが育って巣から飛び立つ
出典
万葉集
前の歌
み立たしの島の荒礒を今見れば 生ひざりし草生ひにけるかも
次の歌
我が御門千代とことばに栄えむと 思ひてありし我れし悲しも