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敷栲の袖交へし君玉垂の
越智野過ぎ行くまたも逢はめやも

歌の意味
袖を交わして共寝をしたあなたは、越智野を過ぎて行ってしまった。また逢うことがあろうか、いやもう逢えない。
鑑賞
巻第二 挽歌 195

詞書は前の歌に続き「柿本朝臣人麻呂、泊瀬部皇女と忍坂部皇子とに献る歌、反歌一首」
 袖を交わして寝た夫が越智野を過ぎて去ってしまい、もう二度と逢えないと、残された妻の悲しみを詠んだ一首である。
 詞書によれば、人麻呂が泊瀬部皇女と忍坂部皇子に献った長歌の第百九十四首に添えられた反歌である。左注には、或本に、河島皇子を越智野に葬るときに泊瀬部皇女に献った歌とあり、日本書紀に、朱鳥五年九月に河島皇子が亡くなったと記すとある。河島皇子の妻であった泊瀬部皇女の立場に立って詠まれている。
 作者の柿本人麻呂は、持統天皇、文武天皇の時代に活躍した宮廷歌人で、長歌や挽歌にすぐれ、万葉集を代表する歌人である。後の時代には歌聖と称えられた。
 本文には異伝の注記があり、四句を「越智野に過ぎぬ」とする本がある。ここでは本行に従う。

 初句「敷栲の」は、寝床に敷く布の意から「袖」にかかる枕詞である。
 二句「袖交へし君」は、袖を交わして共寝をしたあなたの意で、亡き河島皇子を指す。
 三句「玉垂の」は、玉を緒に通して垂らしたものの意で、「緒」と同じ音を含む「越智」にかかる枕詞である。
 四句「越智野過ぎ行く」は、越智野を過ぎて行くの意で、葬送の列が墓所へ向かうことと、この世を去ることとを重ねている。四句切れである。
 結句「またも逢はめやも」の「め」は推量の助動詞「む」の已然形、「やも」は反語で、また逢うことがあろうか、いやもう逢えないと結ぶ。

しきたへ:寝床に敷く布。「袖」「枕」などにかかる枕詞
たまだれ:玉を緒に通して垂らしたもの。「越智」にかかる枕詞
そでかふ:袖を交わす、共寝をする
作者
柿本人麻呂
出典
万葉集
前の歌
畑子らが夜昼といはず行く道を 我れはことごと宮道にぞする
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明日香川しがらみ渡し塞かませば 流るる水ものどにかあらまし