明日香川しがらみ渡し塞かませば
流るる水ものどにかあらまし
- 歌の意味
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明日香川にしがらみを渡してせき止めていたならば、流れる水も穏やかに淀んでいただろうか。
- 鑑賞
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巻第二 挽歌 197
詞書は前の歌に続き「明日香皇女の城上の殯宮の時に、柿本朝臣人麻呂の作る歌、短歌二首」
明日香川にしがらみを渡して流れをせき止めていたなら、流れる水も穏やかに留まっていただろうかと詠み、皇女の命を引き留められなかった無念を、皇女と同じ名の川に託した一首である。
明日香皇女の遺体を葬るまで城上の殯宮に安置したときに、柿本人麻呂が作った挽歌で、長歌の第百九十六首に短歌二首が添えられている。明日香皇女は天智天皇の皇女で、忍壁皇子の妃とされ、文武天皇四年(700)に亡くなった。本歌はその短歌二首の一首目である。
作者の柿本人麻呂は、持統天皇、文武天皇の時代に活躍した宮廷歌人で、長歌や挽歌にすぐれ、万葉集を代表する歌人である。後の時代には歌聖と称えられた。
本文には異伝の注記があり、結句を「水の淀にかあらまし」とする本がある。ここでは本行に従う。
初句「明日香川」は、明日香皇女と同じ名の川で、次歌の第百九十八首も同じ初句で始まる。
二句「しがらみ渡し」の「しがらみ」は、杭を打ち並べて柴や竹を絡め、川の流れをせき止めるものである。
三句「塞かませば」の「ませ」は反実仮想の助動詞「まし」の未然形で、「ませば〜まし」の形で、せき止めていたならばの意となる。
四句「流るる水も」は、流れていく水もの意で、過ぎ去っていく皇女の命を重ねている。
結句「のどにかあらまし」の「のど」は穏やかなさま、「か」は疑問の係助詞で、連体形の「まし」で結ぶ係り結びである。穏やかに留まっていただろうかの意。
しがらみ:川の流れをせき止めるため、杭を打ち並べて柴や竹を絡めたもの
せく:流れをせき止める
のど:穏やかなこと、のどかなこと
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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敷栲の袖交へし君玉垂の 越智野過ぎ行くまたも逢はめやも
- 次の歌
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明日香川明日だに見むと思へやも 我が大君の御名忘れせぬ