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ひさかたの天知らしぬる君故に
日月も知らず恋ひわたるかも

歌の意味
天をお治めになる身となってしまわれた君のために、月日の経つのも分からずに恋い慕い続けることだ。
鑑賞
巻第二 挽歌 200

詞書は前の歌に続き「高市皇子尊の城上の殯宮の時に、柿本朝臣人麻呂の作る歌、短歌二首」
 天を治める身となって亡くなった高市皇子を思い、月日の経つのも分からずに慕い続けると詠んだ一首である。
 高市皇子の遺体を城上の殯宮に安置したときに、柿本人麻呂が作った挽歌で、長歌の第百九十九首は壬申の乱での皇子の活躍を描き、万葉集で最も長い歌として知られる。高市皇子は天武天皇の長男で、持統天皇のもとで太政大臣となり、持統天皇十年(696)に亡くなった。本歌はその短歌二首の一首目である。
 作者の柿本人麻呂は、持統天皇、文武天皇の時代に活躍した宮廷歌人で、長歌や挽歌にすぐれ、万葉集を代表する歌人である。後の時代には歌聖と称えられた。

 初句「ひさかたの」は「天」にかかる枕詞である。
 二句「天知らしぬる」は、天をお治めになってしまわれたの意で、亡くなったことを神として天に昇ったと表している。本巻の第二百二首の「高日知らしぬ」と同じ発想である。
 三句「君故に」は、あなたのためにの意で、高市皇子を指す。
 四句「日月も知らず」は、月日の経つのも分からずにの意である。二句の「知らし」と四句の「知らず」を対比させ、天を治める皇子と、時も分からずに惑う自分とを並べている。
 結句「恋ひわたるかも」の「わたる」は続ける意、「かも」は詠嘆で、恋い慕い続けることだと結ぶ。

しらす:お治めになる
こひわたる:恋い慕い続ける
作者
柿本人麻呂
出典
万葉集
前の歌
明日香川明日だに見むと思へやも 我が大君の御名忘れせぬ
次の歌
埴安の池の堤の隠り沼の ゆくへを知らに舎人は惑ふ