家に来て我が屋を見れば玉床の
外に向きけり妹が木枕
- 歌の意味
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家に帰ってきて寝屋を見ると、寝床の外の方を向いていることよ、妻の木の枕が。
- 鑑賞
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巻第二 挽歌 216
詞書は前の歌に続き「柿本朝臣人麻呂、妻の死にし後に泣血哀慟して作る歌、或本の歌の短歌三首」
葬送を終えて家に帰り寝屋を見ると、妻の木の枕が寝床の外を向いていたと、主のいない寝所の光景に胸を突かれる悲しみを詠んだ一首である。日常の小さな物に死の実感を見いだす表現として名高い。
人麻呂が妻を亡くしたのち、血の涙を流すほどに嘆き悲しんで作った挽歌で、泣血哀慟歌と呼ばれる。長歌二首のそれぞれに短歌二首が添えられ、さらに或本に伝わる長歌と短歌三首も載せられている。一首目の長歌の第二百七首は人目を忍ぶ仲であった軽の里の妻を、二首目の長歌の第二百十首は幼子を残して亡くなった妻を悼む。本歌は或本の長歌の第二百十三首に添えられた短歌三首の三首目で、第二百十一首や第二百十二首に対応する歌をもたない。
作者の柿本人麻呂は、持統天皇、文武天皇の時代に活躍した宮廷歌人で、長歌や挽歌にすぐれ、万葉集を代表する歌人である。後の時代には歌聖と称えられた。
初句「家に来て」は、家に帰ってきての意で、埋葬を終えて戻ったことを示す。
二句「我が屋を見れば」は、寝屋を見るとの意である。
三句「玉床の」の「玉」は美称で、美しい寝床のの意。二人で寝た寝床を指す。
四句「外に向きけり」の「けり」は気づきを表し、外の方を向いていることよの意。四句切れである。
結句「妹が木枕」は妻の木の枕の意で、体言止めと倒置によって、主を失った枕の姿を最後に強く示す。
たまどこ:美しい寝床
こまくら:木で作った枕
- 作者
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柿本人麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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衾道を引手の山に妹を置きて 山道思ふに生けるともなし
- 次の歌
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楽浪の志賀津の子らが罷り道の 川瀬の道を見れば寂しも