古典和歌stream

天離る鄙の荒野に君を置きて
思ひつつあれば生けるともなし

歌の意味
都から遠く離れた田舎の荒野にあなたを置いたまま、思い続けていると、生きている心地もしない。
鑑賞
巻第二 挽歌 227

詞書「或本の歌に曰く」
 都から遠く離れた田舎の荒野に夫を葬ったまま、思い続けていると生きている心地もしないと、残された者の嘆きを詠んだ一首である。
 詞書に「或本の歌に曰く」とあり、人麻呂の死をめぐる歌群の最後に添えられている。左注に、この歌の作者は未詳であるが、古い本がこの歌をここに載せているとある。
 作者は左注に未詳とあり、明らかでない。歌の内容から、人麻呂の妻の立場で詠まれた歌とみられる。

 初句「天離る」は、天の遠くに離れているの意で、「鄙」にかかる枕詞である。
 二句「鄙の荒野に」は、都から遠く離れた田舎の荒れ野にの意である。
 三句「君を置きて」は、あなたを葬り置いての意で、六音の字余りである。本巻の第二百十二首の柿本人麻呂の歌の「妹を置きて」と対応し、妻を葬る夫と夫を葬る妻という反転した構図になっている。
 四句「思ひつつあれば」は、思い続けているとの意で、八音の字余りである。
 結句「生けるともなし」は、生きている心地もしないの意で、本巻の第二百十五首の結句と同じである。

あまざかる:「鄙」にかかる枕詞
ひな:都から遠く離れた土地、田舎
出典
万葉集
前の歌
荒波に寄り来る玉を枕に置き 我れここにありと誰れか告げなむ
次の歌
妹が名は千代に流れむ姫島の 小松がうれに蘿生すまでに