古典和歌stream

大君は千年に座さむ白雲も
三船の山に絶ゆる日あらめや

歌の意味
大君は千年も長くいらっしゃるだろう。白雲も三船の山から消えてしまう日があろうか、ありはしない。
鑑賞
巻第三 雑歌 243

詞書は前の歌に続き「弓削皇子、吉野に遊しし時の御歌一首」の「春日王の和へ奉る歌一首」
 前歌に唱和した歌である。皇子の不安を打ち消し、三船山の白雲が絶えることのないように、皇子も千年も長らえるだろうと寿いでいる。前歌がはかなさの対比として用いた雲を、ここでは永続の象徴として読み替えている点が巧みである。
 作者の春日王は奈良時代初めの王族であるが、同名の人物が複数あり、系譜は明らかでない。

 初句「大君は」 ここでは弓削皇子を指す。
 二句「千年に座さむ」 「座す」は「あり」の尊敬語、「む」は推量で、千年もいらっしゃるだろう、の意である。ここで句切れとなる。
 三句「白雲も」 前歌の「居る雲」を受けている。「も」は皇子と同じく雲もまた、という並列の意である。
 四句「三船の山に」 前歌の二句と同じ語句を用いて、唱和であることを明らかにしている。
 結句「絶ゆる日あらめや」 「め」は推量の助動詞「む」の已然形、「や」は反語である。雲の絶える日などないと強く言い切り、皇子の長寿を請け合って前歌の結句に応じている。

ます:いらっしゃる。「あり」の尊敬語
たゆ:絶える、途切れてなくなる
作者
春日王
出典
万葉集
前の歌
滝の上の三船の山に居る雲の 常にあらむと我が思はなくに
次の歌
み吉野の三船の山に立つ雲の 常にあらむと我が思はなくに