人漕がずあらくもしるし潜きする
鴛鴦とたかべと船の上に棲む
- 歌の意味
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人が漕がなくなってから久しいこともはっきりわかる。水に潜るオシドリとコガモとが、船の上に住みついている。
- 鑑賞
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巻第三 雑歌 258
詞書は前の歌に続き「鴨君足人の香具山の歌一首并せて短歌」の「反歌二首」
香具山のふもとの池の荒廃を嘆いた長歌に添えられた反歌の一首目である。かつて大宮人が遊んだ船は漕ぐ人もなく、水鳥が棲みつくありさまとなっている。水鳥ののどかな姿が、かえって人の絶えた寂しさをきわだたせている。左注には、奈良への遷都ののち旧都を懐かしんで作った歌か、とある。香具山の宮は高市皇子の宮とする説がある。
作者の鴨足人は、鴨君の氏姓をもつ官人であるが、伝は未詳である。
初句「人漕がず」 人が船を漕がないで、の意である。
二句「あらくもしるし」 「あらく」は「ある」のク語法で、あることの意、「しるし」ははっきりしている意である。ここで句切れとなる。
三句「潜きする」 水に潜って餌をとる、の意で、水鳥の習性を描いている。
四句「鴛鴦とたかべと」 鴛鴦はオシドリ、たかべはコガモのことである。「と」を重ねて二種の水鳥を並べている。
結句「船の上に棲む」 八音の字余りである。人の乗るべき船に鳥が棲むという逆転が、荒廃を印象的に示している。
かづく:水に潜る
をし:鳥のおしどり
たかべ:小鴨の古名
- 作者
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鴨足人
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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笥飯の海の庭よくあらし刈薦の 乱れて出づ見ゆ海人の釣船
- 次の歌
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いつの間も神さびけるか香具山の 桙杉の本に苔生すまでに