人見ずは我が袖もちて隠さむを
焼けつつかあらむ着ずて来にけり
- 歌の意味
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人が見ていなければ私の袖で覆い隠してあげようものを。焼けつづけているのだろうか、着ないで来てしまった。
- 鑑賞
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巻第三 雑歌 269
詞書「阿倍女郎の屋部の坂の歌一首」
屋部の坂で詠んだ歌であるが、古来難解とされる。赤土の山肌がむき出しの坂を焼けただれた肌に見立て、人目がなければ自分の袖で覆ってやりたいのに、衣を着ないで来てしまったと戯れたとする解が有力である。恋の思いに焦がれる心を寓したとみる説もある。屋部の坂の所在は明らかでない。
作者の阿倍女郎は阿倍氏出身の女性であるが、同じ呼称の女性が複数あり、伝は明らかでない。
初句「人見ずは」 人が見ていないならば、の意で、「ずは」は打消の仮定条件を表す。
二句「我が袖もちて」 私の袖で、の意である。
三句「隠さむを」 隠してやろうものを、の意で、「を」は逆接を表す。
四句「焼けつつかあらむ」 焼けつづけているのだろうか、の意である。「か」は疑問の係助詞で、「む」の連体形で結ぶ係り結びとなっている。赤土の坂を焼けた肌に見立てたものとされる。
結句「着ずて来にけり」 衣を着ないで来てしまった、の意で、「にけり」は気づきの詠嘆である。覆ってやる衣がないことを残念がって結んでいる。
やく:焼ける、焦げる
- 作者
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阿倍女郎
- 出典
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万葉集
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