磯の崎漕ぎ廻み行けば近江の海
八十の港に鶴さはに鳴く
- 歌の意味
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磯の崎を漕ぎめぐって行くと、近江の海のたくさんの港に、鶴がしきりに鳴いている。
- 鑑賞
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巻第三 雑歌 273
詞書は前の歌に続き「高市連黒人の羈旅の歌八首」
黒人の羈旅の歌八首の四首目である。琵琶湖の岬を船で回っていくと、湖岸の港々で鶴がしきりに鳴いているさまを詠んでいる。広い湖と無数の港、そこに響く鶴の声が、旅の心細さを包み込むように描かれている。なお原文の末尾には「未詳」という注記があり、歌の本文から除いた。
黒人の羈旅の歌八首は、摂津、尾張、近江、三河、山城など、各地の旅で詠まれた歌を集めた一連である。
作者の高市黒人は持統朝から文武朝にかけての歌人で、旅の歌にすぐれ、遠ざかるものを見つめる孤独なまなざしの叙景に独自の境地を開いた。伝は未詳である。
初句「磯の崎」 岩の多い岬を指し、特定の地名とする説もある。
二句「漕ぎ廻み行けば」 「廻む」はめぐる、回り込む意で、岬を漕ぎめぐって行くと、の意である。
三句「近江の海」 琵琶湖のことで、六音の字余りである。
四句「八十の港に」 八十はたくさんの意で、湖岸のあちこちの港を指している。
結句「鶴さはに鳴く」 「さはに」はたくさん、しきりに、の意である。本巻の第二百七十一首に続いて鶴の声を詠み、一連の中で水辺の鶴を響き合わせている。
たむ:めぐる、回り込む
みなと:船の泊まる所、川口
- 作者
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高市黒人
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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四極山うち越え見れば笠縫の 島漕ぎ隠る棚なし小舟
- 次の歌
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我が舟は比良の港に漕ぎ泊てむ 沖へな離りさ夜更けにけり