我妹子に猪名野は見せつ名次山
角の松原いつか示さむ
- 歌の意味
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妻に猪名野はもう見せた。名次山や角の松原は、いつ見せてやろうか。
- 鑑賞
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巻第三 雑歌 279
詞書「高市連黒人の歌二首」
妻を伴って摂津を旅した時の歌である。猪名野の景色はもう妻に見せたが、この先の名次山や角の松原はいつ見せてやれるだろうかと、美しい土地を妻と分かち合いたい思いを詠んでいる。猪名野は現在の兵庫県伊丹市のあたり、名次山と角の松原は西宮市のあたりとされる。次歌、およびその次の妻の答歌と一組をなしている。
作者の高市黒人は持統朝から文武朝にかけての歌人で、旅の歌にすぐれ、遠ざかるものを見つめる孤独なまなざしの叙景に独自の境地を開いた。伝は未詳である。
初句「我妹子に」 我妹子は妻を親しんで呼ぶ語である。
二句「猪名野は見せつ」 「つ」は完了の助動詞で、猪名野はもう見せた、の意である。ここで句切れとなる。
三句「名次山」 名次山は摂津の山で、現在の西宮市名次町のあたりとされる。
四句「角の松原」 角の松原は西宮市津門のあたりの松原とされる。
結句「いつか示さむ」 「か」は疑問の係助詞、「む」は意志で、いつ見せようか、と先の旅路への期待で結んでいる。
わぎもこ:男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語
しめす:指し示して見せる
- 作者
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高市黒人
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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志賀の海女は藻刈り塩焼き暇なみ 櫛笥の小櫛取りも見なくに
- 次の歌
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いざ子ども大和へ早く白菅の 真野の榛原手折りて行かむ