いざ子ども大和へ早く白菅の
真野の榛原手折りて行かむ
- 歌の意味
-
さあ、みんな、大和へ早く帰ろう。白菅の生える真野の榛の林の枝を手折って、土産にして行こう。
- 鑑賞
-
巻第三 雑歌 280
詞書は前の歌に続き「高市連黒人の歌二首」
旅の一行に向かって、大和へ早く帰ろうと呼びかけ、真野の榛の林の枝を手折って行こうと誘う歌である。帰郷を急ぐ気持ちと、土地の風物を持ち帰りたい思いが明るく表れている。真野は現在の神戸市長田区のあたりとされる。次歌は、この歌に答えた黒人の妻の歌である。
作者の高市黒人は持統朝から文武朝にかけての歌人で、旅の歌にすぐれ、遠ざかるものを見つめる孤独なまなざしの叙景に独自の境地を開いた。伝は未詳である。
初句「いざ子ども」 「いざ」は誘いかける語、「子ども」は同行の人々や従者への親しい呼びかけである。
二句「大和へ早く」 大和へ早く帰ろう、の意で、下に「行かむ」などが略されている。
三句「白菅の」 白菅が生えていることから「真野」にかかる枕詞である。
四句「真野の榛原」 榛原は榛の木の林で、次歌では二句と結句にこの句が繰り返される。
結句「手折りて行かむ」 手で折って持って行こう、の意で、「む」は意志、勧誘を表す。
こども:従者や目下の人々への親しい呼びかけ
はりはら:榛の木の林
たをる:手で折り取る
- 作者
-
高市黒人
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
我妹子に猪名野は見せつ名次山 角の松原いつか示さむ
- 次の歌
-
白菅の真野の榛原行くさ来さ 君こそ見らめ真野の榛原