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白菅の真野の榛原行くさ来さ
君こそ見らめ真野の榛原

歌の意味
白菅の生える真野の榛原は、行き帰りのたびにあなたはご覧になるでしょうが、(私はもう見られないのです)この真野の榛原を。
鑑賞
巻第三 雑歌 281

詞書「黒人の妻の答ふる歌一首」
 夫の前歌に答えた歌である。あなたは行き帰りのたびにこの真野の榛原を見られるだろうが、私はそうはいかない、と言って、急いで帰ろうとする夫に対し、もう少しこの景色を見ていたいという思いをほのめかしている。二句と結句に「真野の榛原」を繰り返し、名残惜しさを強めている。作者は高市黒人の妻で、名は伝わらない。

 初句「白菅の」 「真野」にかかる枕詞で、前歌の三句と同じ語を用いて答えている。
 二句「真野の榛原」 前歌の四句をそのまま受けた句である。結句でも繰り返している。
 三句「行くさ来さ」 「さ」は時を表す接尾語で、行く時も来る時も、の意である。
 四句「君こそ見らめ」 「こそ」は係助詞、「らめ」は現在推量の助動詞「らむ」の已然形で、係り結びとなる。あなたこそ見られるでしょうが、と逆接の含みをもつ。
 結句「真野の榛原」 二句を繰り返して体言止めとし、見納めとなる景への惜しみを余韻として残している。

ゆくさくさ:行く時と来る時、行き帰り
出典
万葉集
前の歌
いざ子ども大和へ早く白菅の 真野の榛原手折りて行かむ
次の歌
つのさはふ磐余も過ぎず泊瀬山 いつかも越えむ夜は更けにつつ