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奥山の菅の葉しのぎ降る雪の
消なば惜しけむ雨な降りそね

歌の意味
奥山の菅の葉を押し伏せて降り積もった雪が消えてしまったら惜しいだろう。雨よ、降らないでおくれ。
鑑賞
巻第三 雑歌 299

詞書「大納言大伴卿の歌一首」と注「未詳」
 奥山の菅の葉を押し伏せるほどに降り積もった美しい雪が、雨で消えてしまうのを惜しみ、雨に降るなと呼びかけた歌である。雪の景を愛でる心が、雨への願いという形で素直に表されている。題詞の注に「未詳」とあり、作者が誰であるか定まらないことを示している。
 作者の大納言大伴卿は、誰を指すかについて定説を見ない。大納言の官にあった大伴氏の高官への敬称で、大伴安麻呂とする説と大伴旅人とする説がある。

 初句「奥山の」 奥深い山の、の意である。
 二句「菅の葉しのぎ」 菅はカヤツリグサ科の草で、「しのぐ」は押し伏せる意である。雪の重さで菅の葉が押し伏せられるさまを描いている。
 三句「降る雪の」 降り積もった雪が、の意である。
 四句「消なば惜しけむ」 「消」は消える意の動詞、「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形、「ば」は仮定である。「惜しけむ」は惜しいだろう、の意で、ここで句切れとなる。
 結句「雨な降りそね」 「な〜そ」は禁止、「ね」は願望の終助詞で、雨よ降らないでおくれ、と呼びかけて結んでいる。

すげ:カヤツリグサ科の草、菅
しのぐ:押し伏せる、押さえつける
く:消える
作者
大納言大伴卿
出典
万葉集
前の歌
真土山夕越え行きて廬前の 角太川原にひとりかも寝む
次の歌
佐保過ぎて奈良の手向けに置く幣は 妹を目離れず相見しめとぞ