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佐保過ぎて奈良の手向けに置く幣は
妹を目離れず相見しめとぞ

歌の意味
佐保を過ぎて奈良山の峠の神に供える幣は、妻と絶えることなく会わせてくださいと願ってのことだ。
鑑賞
巻第三 雑歌 300

詞書「長屋王の馬を寧楽山に駐めて作る歌二首」
 旅立ちに際し、奈良山の峠で馬を止め、道の神に幣を供えて祈った歌である。供える幣に込めた願いは旅の無事よりも、妻にいつも会えるようにということだと言い、家に残す妻への思いを率直に表している。次歌と一組をなしている。
 作者の長屋王は天武天皇の孫で、高市皇子の子である。左大臣にまで昇ったが、神亀六年(729)の長屋王の変で自尽した。

 初句「佐保過ぎて」 佐保は平城京の北東、長屋王の邸宅もあった地である。そこを過ぎて、の意である。
 二句「奈良の手向けに」 手向けは峠の神に幣を供えて旅の安全を祈ること、またその場所で、ここでは奈良山の峠を指す。
 三句「置く幣は」 幣は神に供える布などである。
 四句「妹を目離れず」 「目離る」は目から離れる、会わなくなる意で、妻を目から離さず、の意である。
 結句「相見しめとぞ」 「しめ」は使役の助動詞「しむ」の命令形で、会わせてくださいと、の意である。「ぞ」で願いの内容を強く示して結んでいる。

たむけ:峠の神に幣を供えて旅の安全を祈ること、またその場所
ぬさ:神に供える布や紙
めかる:目から離れる、会わなくなる
作者
長屋王
出典
万葉集
前の歌
奥山の菅の葉しのぎ降る雪の 消なば惜しけむ雨な降りそね
次の歌
岩が根のこごしき山を越えかねて 音には泣くとも色に出でめやも