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岩が根のこごしき山を越えかねて
音には泣くとも色に出でめやも

歌の意味
岩がごつごつと険しい山を越えかねて、声を上げて泣くことはあっても、恋しい思いを顔色に出したりするものか。
鑑賞
巻第三 雑歌 301

詞書は前の歌に続き「長屋王の馬を寧楽山に駐めて作る歌二首」
 前歌と一組の歌である。険しい山越えのつらさに声を上げて泣くことはあっても、妻への恋しさを顔色に出して人に悟られるようなことはしないと、心の内を抑える男の意地を詠んでいる。前歌で素直に妻への思いを述べたのに対し、ここではそれを秘めようとする姿を見せている。
 作者の長屋王は天武天皇の孫で、高市皇子の子である。左大臣にまで昇ったが、神亀六年(729)の長屋王の変で自尽した。

 初句「岩が根の」 岩が根は大地に根を張った大きな岩である。
 二句「こごしき山を」 「こごし」は岩がごつごつして険しい意の形容詞である。
 三句「越えかねて」 越えることができずに、の意である。
 四句「音には泣くとも」 「音に泣く」は声を上げて泣く意、「とも」は逆接の仮定条件である。
 結句「色に出でめやも」 「色に出づ」は思いが顔色に表れる意、「め」は推量の助動詞「む」の已然形、「やも」は反語である。恋心を表には出すまいと強く言い切っている。

いはがね:大地に根を張った大きな岩
いろ:顔色、表情
作者
長屋王
出典
万葉集
前の歌
佐保過ぎて奈良の手向けに置く幣は 妹を目離れず相見しめとぞ
次の歌
子らが家道やや間遠きをぬばたまの 夜渡る月に競ひあへむかも