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石室戸に立てる松の木汝を見れば
昔の人を相見るごとし

歌の意味
石室の入り口に立っている松の木よ、お前を見ていると、昔の人に会っているようだ。
鑑賞
巻第三 雑歌 309

詞書は前の歌に続き「博通法師、紀伊国に往きて三穂の石室を見て作る歌三首」
 博通法師の三首の三首目で、一連を締めくくる歌である。岩屋の入り口に立つ老松に呼びかけ、昔から立ち続けるその姿に、かつてここに住んだ人の面影を見ている。前歌で人のはかなさを嘆いたのに続き、長寿の松に昔の人を重ねることで、失われた人へのしのぶ思いを表している。
 博通法師の三首は、紀伊国の三穂の石室を訪れて、そこに住んだと伝える久米の若子をしのんだ一連である。
 作者の博通法師は奈良時代の僧であるが、伝は未詳である。

 初句「石室戸に」 石室戸は岩屋の入り口のことである。
 二句「立てる松の木」 立っている松の木、の意で、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
 三句「汝を見れば」 松に「汝」と呼びかけている。六音の字余りである。
 四句「昔の人を」 昔の人は、かつて岩屋に住んだ久米の若子を指す。
 結句「相見るごとし」 会っているようだ、の意で、松を昔の人の形見として見て結んでいる。

いはやと:岩屋の入り口
作者
博通
出典
万葉集
前の歌
常磐なす石室は今もありけれど 住みける人ぞ常なかりける
次の歌
東の市の植木の木垂るまで 逢はず久しみうべ恋ひにけり