明日香川川淀さらず立つ霧の
思ひ過ぐべき恋にあらなくに
- 歌の意味
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明日香川の川淀にいつも立ちこめている霧のように、すぐに消え去ってしまうような思いではないのに。
- 鑑賞
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巻第三 雑歌 325
詞書は前の歌に続き「神岳に登りて山部宿禰赤人の作る歌一首并せて短歌」の「反歌」
神岳に登り、旧都明日香を眺めて詠んだ長歌に添えられた反歌である。明日香川の淀みにいつも立つ霧はやがて消えるが、自分の旧都を恋う思いは消え去るようなものではないと、古への深い思慕を表している。上の三句は霧の消えやすさから「思ひ過ぐ」を導く序詞である。本巻の第四百二十二首も「思ひ過ぐべき君にあらなくに」と、同じ言い回しで忘れがたい思いを述べている。
作者の山部赤人は聖武朝の宮廷歌人で、行幸に従って多くの歌を詠み、清らかで澄んだ叙景歌にすぐれた。後世、柿本人麻呂と並んで歌聖と称された。
初句「明日香川」 明日香川は旧都明日香を流れる川である。
二句「川淀さらず」 川淀は水のよどんだ所、「さらず」は離れずに、いつも、の意である。
三句「立つ霧の」 立ちこめる霧のように、の意で、ここまでが四句の「思ひ過ぐ」を導く序詞である。
四句「思ひ過ぐべき」 「思ひ過ぐ」は思いが消え去る、忘れる意、「べき」は当然の助動詞である。
結句「恋にあらなくに」 恋はここでは旧都を慕う心を指す。「なくに」によって、消え去るような思いではないのに、と詠嘆を込めて結んでいる。
かはよど:川の水がよどんでいる所
おもひすぐ:思いが消え去る、忘れる
- 作者
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山部赤人
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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ももしきの大宮人の熟田津に 船乗りしけむ年の知らなく
- 次の歌
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見わたせば明石の浦に燭す火の 穂にぞ出でぬる妹に恋ふらく