やすみしし我が大君の敷きませる
国の中には都し思ほゆ
- 歌の意味
-
わが大君が治めていらっしゃるこの国の中でも、とりわけ都のことが思われる。
- 鑑賞
-
巻第三 雑歌 329
詞書「防人司佑大伴四綱の歌二首」
大宰府にあって、都を恋しく思う心を詠んだ歌である。天皇の治める広い国土の中で、ほかでもない都がしきりに思われると、望郷の思いを率直に述べている。前歌の小野老の都をたたえる歌を受けて、遠い筑紫から都をしのぶ思いへと展開している。
作者の大伴四綱は奈良時代の官人で、大宰府の防人司の佑であった。
初句「やすみしし」 「我が大君」にかかる枕詞である。
二句「我が大君の」 天皇を指す。
三句「敷きませる」 「敷く」は治める意、「ませ」は尊敬の補助動詞「ます」、「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
四句「国の中には」 国の中では、の意で、広い国土を示している。
結句「都し思ほゆ」 「し」は強意の副助詞、「思ほゆ」は自然に思われる意で、何よりも都が思われる、と望郷の思いで結んでいる。
しく:治める、統治する
- 作者
-
大伴四綱
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
あをによし奈良の都は咲く花の にほふがごとく今盛りなり
- 次の歌
-
藤波の花は盛りになりにけり 奈良の都を思ほすや君