験なきものを思はずは一杯の
濁れる酒を飲むべくあるらし
- 歌の意味
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考えても甲斐のないことをくよくよ思うよりは、一杯の濁り酒を飲むほうがよいらしい。
- 鑑賞
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巻第三 雑歌 338
詞書「大宰帥大伴卿の酒を讃むる歌十三首」
大宰帥大伴卿の酒を讃むる歌十三首の一首目である。甲斐のない物思いにふけるより、一杯の濁り酒を飲むほうがよいと、一連の主題を示している。役に立たない思い悩みを捨て、酒によって心を慰めようとする姿勢が、以下の歌の出発点となる。
讃酒歌十三首は、大宰府にあった旅人が酒をたたえることを通して、世の賢しらを退け、人生の憂いを慰める思いを詠んだ一連で、中国の竹林の七賢などの故事を踏まえている。
作者の大伴旅人は大伴安麻呂の子で、中納言、大宰帥を経て大納言に至り、天平三年(731)に没した。漢詩文の教養に富み、大宰帥として筑紫にあった時には、山上憶良らとともに歌の交流の中心となった。
初句「験なき」 験は効果、甲斐のことで、甲斐のない、の意である。
二句「ものを思はずは」 「ずは」は、〜しないで、〜するよりは、の意で、思い悩むよりは、の意である。
三句「一杯の」 一つの杯の、の意である。一連の八首目にも「一杯の濁れる酒」が見え、同じ句を共有している。
四句「濁れる酒を」 濁り酒、すなわち醪を漉さない酒である。
結句「飲むべくあるらし」 「べく」は適当、「らし」は推定で、飲むのがよいらしい、と一連の主題を述べて結んでいる。
しるし:効果、甲斐
ひとつき:一杯、一つの杯
- 作者
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大伴旅人
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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憶良らは今は罷らむ子泣くらむ それその母も我を待つらむぞ
- 次の歌
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酒の名を聖と負ほせしいにしへの 大き聖の言の宣しさ