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酒の名を聖と負ほせしいにしへの
大き聖の言の宣しさ

歌の意味
酒の名を「聖人」と名付けた昔の大聖人の言葉の、なんと素晴らしいことか。
鑑賞
巻第三 雑歌 339

詞書は前の歌に続き「大宰帥大伴卿の酒を讃むる歌十三首」
 大宰帥大伴卿の酒を讃むる歌十三首の二首目である。中国の魏の時代、禁酒令のもとで酒飲みたちが清酒を聖人、濁酒を賢人と隠語で呼んだという故事を踏まえ、酒を聖人と名付けた昔の人の言葉は実にすばらしいとたたえている。漢籍の教養を生かした、機知に富む酒の讃美である。
 讃酒歌十三首は、大宰府にあった旅人が酒をたたえることを通して、世の賢しらを退け、人生の憂いを慰める思いを詠んだ一連で、中国の竹林の七賢などの故事を踏まえている。
 作者の大伴旅人は大伴安麻呂の子で、中納言、大宰帥を経て大納言に至り、天平三年(731)に没した。漢詩文の教養に富み、大宰帥として筑紫にあった時には、山上憶良らとともに歌の交流の中心となった。

 初句「酒の名を」 酒の呼び名を、の意である。
 二句「聖と負ほせし」 「負ほす」は名を付ける意で、聖人と名付けた、の意である。
 三句「いにしへの」 昔の、の意で、魏の時代の人々を指す。
 四句「大き聖の」 大聖人の、の意で、酒を聖と名付けた人をたたえて呼んでいる。二句の「聖」と重ね、酒と人とを同じ語で結んでいる。
 結句「言の宣しさ」 「宣しさ」は形容詞「宣し」の名詞形で、その言葉のすばらしいことよ、と詠嘆して結んでいる。

ひじり:聖人。ここでは清酒の異称
おほす:名を付ける
作者
大伴旅人
出典
万葉集
前の歌
験なきものを思はずは一杯の 濁れる酒を飲むべくあるらし
次の歌
いにしへの七の賢しき人たちも 欲りせしものは酒にしあるらし