価なき宝といふとも一杯の
濁れる酒にあにまさめやも
- 歌の意味
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値のつけようもないほどの宝といっても、一杯の濁り酒にどうしてまさることがあろうか。
- 鑑賞
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巻第三 雑歌 345
詞書は前の歌に続き「大宰帥大伴卿の酒を讃むる歌十三首」
大宰帥大伴卿の酒を讃むる歌十三首の八首目である。計り知れない価値をもつ宝であっても、一杯の濁り酒には及ばないと、酒を至上のものとしてたたえている。「価なき宝」は仏典にいう無価の宝珠を踏まえた表現とされる。一首目と同じ「一杯の濁れる酒」の句を用いている。
讃酒歌十三首は、大宰府にあった旅人が酒をたたえることを通して、世の賢しらを退け、人生の憂いを慰める思いを詠んだ一連で、中国の竹林の七賢などの故事を踏まえている。
作者の大伴旅人は大伴安麻呂の子で、中納言、大宰帥を経て大納言に至り、天平三年(731)に没した。漢詩文の教養に富み、大宰帥として筑紫にあった時には、山上憶良らとともに歌の交流の中心となった。
初句「価なき」 値のつけようもない、はかり知れない価値の、の意である。
二句「宝といふとも」 宝といっても、の意で、「とも」は逆接の仮定条件である。
三句「一杯の」 一つの杯の、の意で、一連の一首目と同じ句である。
四句「濁れる酒に」 濁り酒に、の意である。
結句「あにまさめやも」 「あに」は反語を強める副詞、「め」は推量の「む」の已然形、「やも」は反語で、どうしてまさることがあろうか、と強く言い切っている。
あたひ:値段、価値
- 作者
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大伴旅人
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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あな醜賢しらをすと酒飲まぬ 人をよく見ば猿にかも似む
- 次の歌
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夜光る玉といふとも酒飲みて 心を遣るにあにしかめやも