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黙居りて賢しらするは酒飲みて
酔ひ泣きするになほしかずけり

歌の意味
黙りこんで賢こぶっているのは、酒を飲んで酔い泣きすることに、やはり及ばないことだ。
鑑賞
巻第三 雑歌 350

詞書は前の歌に続き「大宰帥大伴卿の酒を讃むる歌十三首」
 大宰帥大伴卿の酒を讃むる歌十三首の十三首目である。一連を締めくくる歌で、黙って賢そうにしているよりも、酒を飲んで酔い泣きするほうがやはりよいと結論づけている。四首目や十首目の「酔ひ泣き」を再び取り上げ、七首目の「賢しら」への批判とも呼応させて、一連の主題をまとめている。
 讃酒歌十三首は、大宰府にあった旅人が酒をたたえることを通して、世の賢しらを退け、人生の憂いを慰める思いを詠んだ一連で、中国の竹林の七賢などの故事を踏まえている。
 作者の大伴旅人は大伴安麻呂の子で、中納言、大宰帥を経て大納言に至り、天平三年(731)に没した。漢詩文の教養に富み、大宰帥として筑紫にあった時には、山上憶良らとともに歌の交流の中心となった。

 初句「黙居りて」 黙っていて、の意で、「黙」は黙っていることである。
 二句「賢しらするは」 利口ぶるのは、の意で、一連の七首目の「賢しら」と同じ語を用いている。
 三句「酒飲みて」 酒を飲んで、の意である。
 四句「酔ひ泣きするに」 酔い泣きすることに、の意で、一連の四首目、十首目と同じ語を用いている。
 結句「なほしかずけり」 「しく」は及ぶ意、「けり」は気づきの詠嘆で、やはり及ばないことだ、と一連の結論として結んでいる。

もだ:黙っていること
しく:及ぶ、匹敵する
作者
大伴旅人
出典
万葉集
前の歌
生ける者遂にも死ぬるものにあれば この世なる間は楽しくをあらな
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世間を何に譬へむ朝開き 漕ぎ去にし船の跡なきごとし