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大汝少彦名のいましけむ
志都の石屋は幾代経にけむ

歌の意味
大汝神と少彦名神がおいでになったという志都の岩屋は、どれほどの長い時代を経てきたのだろうか。
鑑賞
巻第三 雑歌 355

詞書「生石村主真人の歌一首」
 国造りの神として知られる大汝神と少彦名神が住んだという伝承のある志都の岩屋を訪れ、神代からの長い歳月に思いをはせた歌である。神話の時代と現在とを岩屋を通して結び、悠久の時間への感慨を詠んでいる。志都の石屋は島根県大田市の静之窟とする説などがある。本巻の第三百七首の三穂の石室の歌と同じく、伝承の岩屋をしのぶ歌である。
 作者の生石真人は奈良時代の官人であるが、伝は未詳である。

 初句「大汝」 大汝は大国主神の別名で、少彦名神とともに国造りをしたと伝えられる。
 二句「少彦名の」 少彦名神は大汝とともに国造りをしたという小さな神である。
 三句「いましけむ」 「います」は「あり」の尊敬語、「けむ」は過去推量の連体形で、おいでになったという、の意である。本巻の第三百七首の三句「いましける」と響き合っている。
 四句「志都の石屋は」 志都の石屋は二神が住んだと伝える岩屋である。
 結句「幾代経にけむ」 どれほどの時代を経たのだろうか、の意で、三句と同じ「けむ」を重ね、悠久の時への感慨で結んでいる。

いはや:岩の洞窟
作者
生石真人
出典
万葉集
前の歌
縄の浦に塩焼く煙夕されば 行き過ぎかねて山にたなびく
次の歌
今日もかも明日香の川の夕さらず かはづ鳴く瀬のさやけくあるらむ