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潮干なば玉藻刈りつめ家の妹が
浜づと乞はば何を示さむ

歌の意味
潮が引いたら玉藻を刈り集めておこう。家の妻が浜の土産をほしがったら、ほかに何を見せたらよいだろうか。
鑑賞
巻第三 雑歌 360

詞書は前の歌に続き「山部宿禰赤人の歌六首」
 山部赤人の歌六首の四首目である。潮が引いたら玉藻を刈り集めておこう、家で待つ妻が浜からの土産をほしがったら、ほかに見せるものがないからと、妻への心遣いを詠んでいる。旅先でも家の妻を思う心が、海辺の景物を通して温かく表れている。
 山部赤人の歌六首は、播磨から摂津にかけての海辺の旅の歌を中心とし、望郷や恋の思いを交えた一連である。
 作者の山部赤人は聖武朝の宮廷歌人で、行幸に従って多くの歌を詠み、清らかで澄んだ叙景歌にすぐれた。後世、柿本人麻呂と並んで歌聖と称された。

 初句「潮干なば」 「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形、「ば」は仮定条件で、潮が引いたならば、の意である。
 二句「玉藻刈りつめ」 「刈りつむ」は刈り集める意で、その命令形である。刈り集めておけ、と同行者に、あるいは自らに呼びかけている。ここで句切れとなる。
 三句「家の妹が」 家にいる妻が、の意で、六音の字余りである。
 四句「浜づと乞はば」 浜づとは浜からの土産、「乞はば」はほしがったならば、の意である。
 結句「何を示さむ」 「む」は推量で、ほかに何を見せようか、何もないではないか、の意である。玉藻を刈り集める理由を示して結んでいる。

はまづと:浜からの土産
かりつむ:刈り集める
作者
山部赤人
出典
万葉集
前の歌
阿倍の島鵜の住む磯に寄する波 間なくこのころ大和し思ほゆ
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秋風の寒き朝明を佐農の岡 越ゆらむ君に衣貸さましを