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秋風の寒き朝明を佐農の岡
越ゆらむ君に衣貸さましを

歌の意味
秋風の寒い夜明けに、佐農の岡を今ごろ越えているであろうあなたに、私の衣を貸してあげればよかったのに。
鑑賞
巻第三 雑歌 361

詞書は前の歌に続き「山部宿禰赤人の歌六首」
 山部赤人の歌六首の五首目である。秋風の冷たい夜明けに旅立った男を思い、今ごろ佐農の岡を越えているだろう彼に、衣を貸してあげればよかったと悔やむ女の立場で詠まれている。旅の歌の一連の中に、送り出した側の思いを配し、旅の寒さと別れの情を浮かび上がらせている。佐農の岡は所在未詳で、紀伊の佐野とする説などがある。
 山部赤人の歌六首は、播磨から摂津にかけての海辺の旅の歌を中心とし、望郷や恋の思いを交えた一連である。
 作者の山部赤人は聖武朝の宮廷歌人で、行幸に従って多くの歌を詠み、清らかで澄んだ叙景歌にすぐれた。後世、柿本人麻呂と並んで歌聖と称された。

 初句「秋風の」 秋風が吹く、の意である。
 二句「寒き朝明を」 朝明は夜明け方で、寒い夜明けに、の意である。
 三句「佐農の岡」 佐農の岡は所在未詳の岡である。
 四句「越ゆらむ君に」 「らむ」は現在推量で、今ごろ越えているだろうあなたに、の意である。
 結句「衣貸さましを」 「まし」は反実仮想、「を」は詠嘆で、衣を貸してあげればよかったのに、と悔やむ思いで結んでいる。

あさけ:夜明け方
きぬ:衣服
作者
山部赤人
出典
万葉集
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潮干なば玉藻刈りつめ家の妹が 浜づと乞はば何を示さむ
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みさご居る磯廻に生ふるなのりその 名は告らしてよ親は知るとも