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大船に真楫しじ貫き大君の
命畏み磯廻するかも

歌の意味
大船に左右の櫂をたくさん取り付けて、大君の仰せを謹んで受け、磯伝いに漕ぎめぐって行くことだ。
鑑賞
巻第三 雑歌 368

詞書「石上大夫の歌一首」
 天皇の命を受けて任地へ向かう船旅の歌である。大船に櫂をたくさん取り付け、勅命を謹んで受けて磯伝いに進んでいくと、官人としての務めの重さと旅の苦労を詠んでいる。左注には、石上朝臣乙麻呂が越前国守に任じられたので、この大夫はその人か、とある。次歌はこの歌に和した歌である。
 作者の石上大夫は、誰を指すかについて定説を見ない。大夫は四位や五位の官人に対する敬称で、左注は越前守に任じられた石上乙麻呂かと推測している。

 初句「大船に」 大きな船に、の意である。
 二句「真楫しじ貫き」 真楫は船の左右に備えた櫂、「しじ」はたくさん、「貫く」は取り付ける意で、櫂をたくさん取り付けて、の意である。
 三句「大君の」 天皇を指す。
 四句「命畏み」 天皇の命令を恐れ謹んで、の意である。
 結句「磯廻するかも」 磯廻は磯伝いに舟を漕ぎめぐること、「かも」は詠嘆で、務めのための旅の苦労を思って結んでいる。

まかぢ:船の左右に備えた櫂
いそみ:磯伝いに舟を漕ぎめぐること
作者
石上大夫
出典
万葉集
前の歌
越の海の手結が浦を旅にして 見れば羨しみ大和偲ひつ
次の歌
物部の臣の壮士は大君の 任けのまにまに聞くといふものぞ