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雨降らずとの曇る夜のぬるぬると
恋ひつつ居りき君待ちがてり

歌の意味
雨は降らずに空一面が曇っている夜のように、しっとりと湿った思いで恋い続けていた。あなたを待ちながら。
鑑賞
巻第三 雑歌 370

詞書「阿倍広庭卿の歌一首」
 雨は降らないのに一面に曇った夜の、しっとりと湿った空気のように、晴れない思いで恋しい人を待ち続けていたと詠んだ歌である。三句の「ぬるぬると」の意味には諸説があり、古来難解とされるが、晴れやらぬ曇り空の夜に、待つ恋の心の湿りを重ねたものと解される。
 作者の阿倍広庭は右大臣阿倍御主人の子で、中納言に至り、天平四年(732)に没した。

 初句「雨降らず」 雨は降らずに、の意である。
 二句「との曇る夜の」 「との曇る」は空一面に曇る意で、ここまでが三句を導く序の働きをしている。
 三句「ぬるぬると」 意味には諸説があり、しっとりと湿ったさまとも、ゆるゆると心がほどけぬさまともいわれる。
 四句「恋ひつつ居りき」 「つつ」は継続、「き」は過去で、恋い続けていた、の意である。ここで句切れとなる。
 結句「君待ちがてり」 「がてり」は、〜しながら、の意の接続助詞で、あなたを待ちながら、と倒置で結んでいる。

とのぐもる:空一面に曇る
作者
阿倍広庭
出典
万葉集
前の歌
物部の臣の壮士は大君の 任けのまにまに聞くといふものぞ
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意宇の海の河原の千鳥汝が鳴けば 我が佐保川の思ほゆらくに