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あきづ羽の袖振る妹を玉櫛笥
奥に思ふを見たまへ我が君

歌の意味
トンボの羽のように薄い袖を振って舞う娘を、私が心の奥深く大切に思っているのを、どうぞご覧ください、わが君よ。
鑑賞
巻第三 雑歌 376

詞書「湯原王の宴席の歌二首」
 宴席で詠んだ歌二首の一首目である。トンボの羽のように薄く透ける袖を振って舞う娘を、自分が心の奥で大切に思っている娘として客に紹介し、どうぞご覧くださいと勧めている。主人として客をもてなす心と、娘への愛情とが、優美な比喩の中に表れている。
 作者の湯原王は志貴皇子の子で、奈良時代の王族である。優美で繊細な歌を残している。

 初句「あきづ羽の」 あきづはトンボの古名で、トンボの羽のように薄く透ける、の意である。
 二句「袖振る妹を」 袖を振って舞う娘を、の意である。
 三句「玉櫛笥」 玉櫛笥は櫛などを入れる美しい箱で、箱の奥の意から「奥」にかかる枕詞である。
 四句「奥に思ふを」 心の奥深く大切に思っているのを、の意である。
 結句「見たまへ我が君」 「たまへ」は尊敬の命令で、どうぞご覧ください、わが君よ、と客に呼びかけて結んでいる。

あきづ:トンボの古名
たまくしげ:櫛などを入れる美しい箱
作者
湯原王
出典
万葉集
前の歌
吉野なる菜摘の川の川淀に 鴨ぞ鳴くなる山蔭にして
次の歌
青山の嶺の白雲朝に日に 常に見れどもめづらし我が君